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生姜日記
だらだらとたまに日記を。
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2024/05/09 (Thu) 23:07
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2010/01/03 (Sun) 15:48
コムバク文。
一緒にいきたい可愛い恋人。




コムイが死んだ。


いや、死んだように倒れているだけ。


枕に黒髪が広がり、陶器に入ったヒビの様だ。一束掬い指から流れ落ちる感触に目を細めたが、コムイは眠ったままだった。自分の中で沸々と膨らむ感情に顔が顰られる。


+++

僕が気粉れに本部を訪れると騒々しい化学班がいつにも増して賑やかで、どうしたのだ。とリーバーに訊くとコムイが倒れたと告げられ、腕を引っ張られた。引きずられながら、オイまて何故僕が引っ張られているのだ。と、脚をなんとかリーバーの急く歩幅に併せながら叫ぶと、アンタあの人の恋人でしょう!?と怒られた。改めて人から恋人だなんて言われると恥かしくて背中が痒くなって、ああコレジンマシン出るかも。なんて考えていたものだからろくに抵抗も出来ずに医務室まで連れていかれた。

医務室に着くとコムイがベッドに担架から移されている所だった。瞼が閉じているから意識が無いのかもしれない。しかし婦長が慌てていないので大したことは無いのだろう。そう小さく誰にも悟られないよう安堵したけれど、コムイの姿を見た時はほんの少し心臓の動きが鋭くなった。


一瞬、死んだかと思った。


白いシーツや白い医療カーテンに包まれるその姿は葬儀のように見えて、眉を寄せてしまった。花でも添えたら完璧だな。自分の軽い妄想に若干呆れる。
コムイが無理をして倒れる事は良くある事だった。
働く度にキャパオーバーになるとはどういう事だ。たまに真面目にするとすぐこれだ。常に働け馬鹿者。そして自分の限界を見極めて加減しろ阿呆。
そんな悪態をついたとしても今のコムイには聞こえないだろう。(聞いてたって「ごめんねぇ」とヘラヘラ笑うだけだ)その阿呆は今はただただ、真っ白な中で長い睫毛を閉じていた。
何故だか、自分の勝手な妄想だとは解っているのに。僕にはコムイが死んだようにしか見えず、医療班員達が治療に走っている間も、化学班員やエクソシスト達が心配してコムイの回りに集まっている間も、皆より数歩離れた誰もいない空間から横たわる血の気の失せたコムイを見つめているだけだった。
それは悲嘆のような感情のせいではなく。

ある程度時間が経つと化学班員達は仕事に戻り、エクソシスト達は婦長に追い出されてしまった。なのに僕には気を遣ってくれたのだろう。コムイに近寄らず遠くから眺める僕がショックを受けているように見えたのかも知れない。婦長が椅子を出してくれ、僕だけが追い出されなかった事に関して誰も何も言わなかった。変に気を遣われると気恥ずかしいので止めてほしかったが、今日は何も言う気になれず、大人しく好意に甘えると婦長が人払いをして僕とコムイの二人きりにさせてくれた。



そうして、眠るコムイの横に居る今に至るのだ。
頭の片隅で記憶を辿った。気を失う程の酷い倒れ様は今まで無かったかもしれない。風邪でもひいているせいで体力が落ちているのだろうか。うっすら浮かぶ隈にそっと指を這わせる。ん、と微かにコムイが身じろいだ。もっと近くでコムイの顔が見たくなって、ベッドの縁に座り顔を覗き込むと、先程よりかは顔色が良くなったようだった。

静かに上下する胸と、か細い音を立てて酸素を吸い込んでいる口唇。生きている。当たり前の事だが自分にとっては大事な確認だった。

頬を撫でていると、コムイの顔の筋肉が震え、たっぷりと時間をかけて瞼が開いた。焦点が合わないようで、瞳孔の輪郭がぼやけているように見えた。その双眸は困惑したみたいにさ迷い、最後に僕の顔に向けられ漸く光を点した。寝起きの惚けた顔。間抜けではあったが清らかな顔だった。

死んだかと思った。そうコムイに零した自分の唇は不謹慎な言葉にも関わらず端が上がっていたように思った。それでもコムイは僕の顔を見て、その不謹慎な言葉を幸福だというように笑って「しぬときは、バクちゃんにきす、ひゃっかい、してから」と呂律がまだ十分には回らない口唇で愛をほざいた。

倒れたコムイを見た時、自分の中で何かが裂け、一気に脳と心臓に浸透した。それは嫉妬のような、失望のような代物で間違っても悲嘆のような綺麗な感情では無かった。もしもコムイが死んだとしてその時僕を襲う絶望は、死んでしまったという概念ではなく、僕だけおいていかれたという我が儘な子供のようなものなのだろう。

きっと次にこの歪んだ口唇から出る言葉は誤魔化しなどではない本気の言葉。




宇宙に帰りたくなる日




(お前が逝くとき僕もついてってやろうじゃないか。)



+++




「死んだかと思った」
そう言ったバクちゃんは今にも泣きそうな笑顔で、その言葉と顔が僕にとってどれだけ嬉しいものかだなんてバクちゃんきっと知らない。





宇宙に帰りたくなる日:にやりからお借りしました。







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